オンプレミスのActive Directory(AD)とクラウドのEntraID(旧Azure AD)を連携させる方法はいくつかありますが、今回は新しく登場した「Entra Connect Cloud Sync」を使って同期する方法をご紹介します。
この新しいツールは、従来の「Entra Connect」と比較して、より軽量で管理が簡単な同期ソリューションです。
「Entra Connect Cloud Sync」を使えば、オンプレミスのADとEntraID(クラウド上のディレクトリサービス)を簡単に連携させることができ、ユーザー管理が効率よく行えます。特にWindows Server 2025環境で利用すると、その設定や管理がスムーズに行えるので、クラウド移行やハイブリッド環境を構築する際に非常に役立ちます。
本記事では、Windows Server 2025環境で「Entra Connect Cloud Sync」を使用して、オンプレミスADからEntraIDにデータを同期する手順をわかりやすく解説していきます。これを参考にして、クラウドとオンプレミスのディレクトリ間での同期を簡単に始めてみましょう!
本記事はこんな方におすすめ!
- 「クラウドへの移行を検討しているが、設定が難しそうで不安を感じている方へ」
- 「オンプレとクラウドのユーザー管理を一元化したいと考えている方へ、本記事がその解決策をご提供します。」
Entra Connect Cloud Syncとは?
「Entra Connect Cloud Sync」は、Microsoftが提供する新しいツールで、オンプレミスのActive Directory(AD)とクラウドのEntraID(旧Azure AD)を簡単に同期させるためのソリューションです。
このツールは、従来のEntra Connectと比べて、軽量でシンプルな設計が特徴です。これにより、IT管理者は複雑な設定なしで、迅速にクラウドとオンプレミスのディレクトリを連携させることができます。
「Entra Connect Cloud Sync」は、クラウド環境とオンプレミスの環境を一貫して管理できるようにするため、特にハイブリッドなITインフラを構築する際に非常に便利です。オンプレミスで管理されているユーザーアカウントやグループを、セキュアにクラウドに同期させることで、ユーザー認証やアクセス管理を一元化することができます。
さらに、Entra Connect Cloud Syncはクラウドベースで動作するため、サーバーを追加で立てる必要がなく、手軽に導入できるのも大きなメリットです。これにより、クラウド環境を積極的に活用したい企業や組織にとって、非常に便利で効率的なツールとなっています。
オンプレADからEntraIDの同期とは?
オンプレミスのActive Directory(オンプレAD)からEntra ID(旧Azure AD)に同期するというのは、社内に設置されたWindows Serverで管理しているユーザーアカウントやグループの情報を、クラウドサービスであるEntra IDにコピーし、常に最新の状態に保つことを指します。
この同期作業により、オンプレミス環境とクラウド環境のユーザー情報を一元管理できるようになり、両者の間で統合されたアクセス制御を実現できます。
具体的には、オンプレAD内のユーザーやグループ、パスワードの情報をクラウド上のEntra IDに同期させることで、ユーザーは同じ資格情報(ユーザー名とパスワード)を使って、社内のリソースだけでなく、Microsoft 365やAzureなどのクラウドサービスにもシームレスにアクセスできるようになります。
同期のメリット
- 一元管理
オンプレミスとクラウドのユーザー情報を一括で管理できるため、運用管理が簡素化されます。 - シングルサインオン(SSO)
ユーザーが一度サインインすれば、社内リソースやクラウドサービスにアクセスできるようになります。 - セキュリティ強化
パスワードハッシュ同期や多要素認証(MFA)の導入により、セキュリティの強化が図れます。 - 柔軟なアクセス管理
クラウド上で条件付きアクセスを設定し、アクセス制御を柔軟に行えます。
「Entra Connect Cloud Sync」というツールを使うことで、この同期が実現します。このツールは、オンプレADとEntra IDを定期的に同期させ、両方の環境が常に一致するように維持します。
前提条件
今回は例として、オンプレ側の「TEST」ユーザー(TEST@digitalwith.net)をEntraIDへ同期させます。
オンプレ側とクラウド側に、以下検証環境を構築しておきます。
オンプレ検証環境の作成
- Windows11ProのHyper-V上に、WindowsServer2025を構築しています。
- 1フォレスト1ドメインとして、ドメインコントローラー(digitalwith.local)を構成しています。
ドメインコントローラー(DC)へ昇格する方法は、こちらの記事で解説していますので参考にしてみてください。
クラウド検証環境の作成
- Microsoft Entra 管理センターへカスタムドメイン「digitalwith.net」を追加しています。
カスタムドメインを登録する方法は、こちらの記事で解説していますので参考にしてみてください。
事前準備
同期確認用ユーザーの作成
オンプレADのドメイン名が「.local」場合、EntraID のカスタム ドメイン名に「.local」を指定することができないため、「Entra Connect Cloud Sync」を使用して EntraID 間で同期設定をすることができません。解決策としてオンプレADに作成した「TEST」ユーザーの「電子メール」属性に、EntraIDのカスタムドメインに追加した「digitalwith.net」を使用したメールアドレス(TEST@digitalwith.net)を設定しています。
EntraConnectCloudSyncのDL
EntraConnectCloudSyncをインストール
「Create gMSA」を選択し、グループ管理サービス アカウント (gMSA) を作成いたします。
このgMSAは、エージェントサービスの実行に利用されます。
EntraConnectCloudSync(同期)実行
IIF(IsPresent([mail]), [mail], IIF(IsPresent([userPrincipalName]), [userPrincipalName], Error(“AccountName is not present”)))
スキーマ保存しないと属性マッピングが更新されないので注意が必要です。
ユーザー同期確認
「TEST」ユーザー名(ユーザープリンシパル名)のドメイン部分が、「digitalwith.net」となっています。
FAQ
- Entra Connect Cloud Syncは無料で使える?
-
はい、Microsoft Entra IDのライセンス内で利用できるため追加コストはかかりません。
- セキュリティ対策はどうなっていますか?
-
パスワードハッシュの同期やMFA(多要素認証)に対応しており、強固なセキュリティ管理が可能です。
- 既存のEntra Connectと併用は可能?
-
はい、既存の「Entra Connect」と「Entra Connect Cloud Sync」の併用は可能です。
- Entra Connect Cloud Syncでできることは?
-
Entra Connect Cloud Syncは、オンプレミスのActive DirectoryとAzure AD (Entra ID) 間でユーザー、グループ、および連絡先情報を同期するためのクラウドベースのソリューションです
まとめ
今回は、オンプレADとEntraIDをシンプルに同期!Entra Connect Cloud Syncの特徴について紹介しました。
「Entra Connect Cloud Sync」は、オンプレミスのActive Directory(AD)とクラウドのEntra IDをシンプルに統合するための新しいソリューションです。これを使うと、ユーザーやグループなどのディレクトリデータを簡単に同期でき、管理がずっと楽になります。これまでの「Entra ID Connect」とは違い、オンプレミスにエージェントをインストールするだけで同期ができ、煩わしい設定や管理の手間を大きく減らすことができます。
「Entra Connect Cloud Sync」の特徴は、軽量なインフラでクラウドベースの柔軟な管理ができ、高可用性を確保できる点です。このため、複雑なハードウェア管理が不要で、よりシンプルに同期を実現できます。特に、設定やメンテナンスに負担を感じている管理者や、リソースが限られている中小企業にとって、非常に便利な選択肢となります。
今後、クラウド技術がさらに進化する中で、「Entra Connect Cloud Sync」はますます多くの企業に利用される同期ソリューションとなるでしょう。
クラウドとオンプレミスの境界が薄れつつある今、効率的でシンプルな同期方法を提供する「Entra Connect Cloud Sync」は、ID管理をよりスムーズにするための強力なツールです。あなたの企業でも、ぜひこのソリューションを導入して、管理の効率化を図ってみてください。
参考情報
本記事内の設定手順は、MicrosoftのMicrosoft Entra のドキュメントに基づいて解説しています。詳細な仕様については、公式ドキュメントも併せてご確認ください
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